2005年2月17日(木)16:29

スペインがEU憲法の躓きの石になる恐れも

マドリード(AP)

スペインでは次の日曜日にEU憲法の国民投票が実施される。しかし、世論調査の結果によれば、憲法の内容は国民のほとんど誰一人知らず、憲法について聞いたこともないという人も多い。憲法承認が過半数を占めると予想されるものの、投票率は低くなる可能性がある。国民投票に拘束力はなく、批准は議会で決定される。

スペインでの国民投票は、欧州連合で最初のEU憲法国民投票となる。それゆえ特別な注目を集めている。EU憲法の発効には加盟全25ヶ国の批准が必要となる。ドイツなどの国では国民投票は行われず、議会の承認のみによる。すでに数ヶ国では批准が済んでいる。*

スペインの国民投票は、たとえ過半数がEU憲法を承認したとしても、投票率が低ければ、憲法の行方に暗雲をもたらす恐れがある。イギリスなどの国の欧州統合懐疑論者が勢いづく可能性がある。「加盟国の中には神経を尖らす国も出てこよう。投票率が低くなれば、それだけ反対派の得票率が高くなるからである」とロンドンの欧州改革センターのダニエル・キオヘイン Daniel Keohane は述べる。キオヘインや他の人々も、イギリスだけでなくフランス、ポーランド、チェコでもEU憲法国民投票の成功が危ういと見ている。

スペインは、フランシスコ・フランコ将軍の独裁下にあって長い間孤立していたため、EUに加盟したのは比較的最近のことである。国民はきわめて親EU的と見られている。スペインはEUの補助金から大きな恩恵を受けている。また1986年のEU加盟は、1975年のフランコ死去後の民主主義の回復と同一に捉えられている、とマドリードのエルカノ・インスティテュートElcano-Institut のチャールズ・パウエル副所長 Charles Powell は分析する。副所長は、同インスティテュート内部のアンケートの結果として、日曜日の投票率は35パーセントから40パーセントに留まると予測する。そうなれば、フランコ時代以降の選挙や国民投票で最低の投票率となる。国立社会研究センターは68パーセントと予測しているが、同センターは2004年の欧州議会選挙の際に投票率を実際より20パーセントも高く見積もった。

投票率が低ければ、議会でEU憲法の批准を問うサパテーロ首相に対する国民の負託の意味が問われることになる。EU憲法の批准の可否は議会が決定する。政府広報官が木曜日に述べたところによれば、サパテーロ首相は33パーセント以上、すなわち三分の一以上の投票率があれば充分と考えているという。首相は過半数が憲法を承認するのは確実と見ている。

EU憲法の発効には加盟全25ヶ国の批准が必要であるが、1ヶ国でも拒否した場合の事態に対して、予防措置は定められていない。欧州改革センターのキオヘインは、どの国が拒否したかによると見ている。もしフランスであれば「憲法草案は葬り去られる」。イギリスであればいくつかのシナリオが考えられる。チェコが拒否したのであれば、他の24ヶ国は無視して進むであろう。加盟国の中には「他の加盟国よりも平等性が高い」国もあるのだから**、と語っている。

原題:Spanien koennte Stolperstein fuer EU-Verfassung werden

訳注:
*) すでに批准を終えているのは、リトアニア(2004年11月11日)、ハンガリー(2004年12月22日)、スロヴェニア(2005年2月1日)。また欧州議会も今年1月12日に批准している。
**)「他の加盟国よりも平等性が高い」(Einige Mitgliedslander seien eben ≪gleicher als die anderen≫.)とは語法的には奇妙な表現であるが、すべての加盟国の平等を謳いながらも、実際は中軸国の意向や動向に左右されるEUの状況を踏まえた、イギリス人特有の皮肉であろう。
しかし、2000年12月の首脳会議で採択されたニース条約(東方拡大の枠組みなどを定めたもの)が、翌2001年6月アイルランドの国民投票で否決され、アイルランド1ヶ国の反対で発効に至らなかった際、EUは「無視して進む」ことをせず(アイルランドもEUのいわば周辺国である)、2002年10月に再度の国民投票で批准されるまで、辛抱強く待ち続けたことも忘れてはならない。




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